打席に入る前に決まった動作をするバッター、サーブの前に必ず同じ手順を踏むテニス選手——一流のアスリートには、たいてい自分だけの「ルーティン」があります。これは縁起担ぎではなく、本番で力を出すための立派なメンタル技術です。
この記事では、試合前ルーティンの作り方を、初めての人にもわかるように手順で紹介します。難しくありません。今日から作れます。
なぜルーティンが本番に効くのか
試合前ルーティン(プレ・パフォーマンス・ルーティン)は、スポーツ心理学でも研究されているテーマです。決まった手順を踏むことで注意を「今やるべきこと」に集めやすくなり、余計な雑念や不安に意識が向きにくくなるとされています(スポーツ心理学者コッタリル氏のレビューより)。
※出典:Pre-performance routines in sport: current understanding and future directions (Cotterill, 2010)
つまりルーティンは、緊張する場面でも「いつも通り」に戻すためのスイッチ。同じ動作を繰り返すほど、その効果は強くなります。
自分だけのルーティンを作る5ステップ
ステップ1:落ち着く動作を1つ選ぶ
深呼吸、肩を回す、グローブを握り直す——やると少し落ち着く、体の動作を一つ選びます。シンプルなものでOKです。
ステップ2:集中を入れる「キーワード」を決める
「丁寧に」「リラックス」「いつも通り」など、口の中で唱える短い言葉を一つ用意します。自分がスッと前を向ける言葉がいちばんです。
ステップ3:イメージを1つ加える
成功する自分の動きを、頭の中で一瞬だけ思い描きます。長くなくて構いません。「いい流れ」を体に思い出させるイメージです。
ステップ4:順番を固定する
「深呼吸→キーワード→イメージ」のように、毎回まったく同じ順番に並べます。順番を変えないことが、スイッチとして効くポイントです。
ステップ5:練習から毎回くり返す
本番だけ使おうとしても効きません。練習の一本一本からルーティンを行うことで、本番でも自然と発動するようになります。
ルーティン作りの注意点
- 長くしすぎない:10〜20秒程度に。長いと逆に集中が切れます
- 結果に依存させない:「これをやれば必ず勝つ」ではなく「いつもの自分に戻る」ためのもの
- できなくても焦らない:状況でできない日もある。崩れても気にしない柔軟さも大切
競技別・ルーティンの例
イメージしやすいよう、競技ごとの例を挙げます。そのまま真似るより、自分に合う形にアレンジするのがおすすめです。
野球(打席・投球前)
「素振り→深呼吸→バットでベースを軽くたたく→キーワード」。投手なら「ボールを握り直す→深呼吸→捕手のミットを見る」など、毎回同じ間(ま)を作ります。
サッカー・バスケ(PK・フリースロー)
「ボールを置く/受け取る→数歩下がる→深呼吸→狙いを定める→キーワード」。止まった状況だからこそ、ルーティンが効きます。
テニス・卓球・ゴルフ(サーブ・ショット前)
「ボールを数回つく/素振り→呼吸→一点を見る→打つ」。個人競技は自分のペースを作りやすく、ルーティンの効果が出やすい場面です。
ルーティンが崩れた時の戻し方
本番では、時間がない・流れが悪いなどでルーティンができない日もあります。そんな時は「深呼吸ひとつ+キーワード」だけの短縮版に切り替えればOK。崩れても焦らず、できる範囲で「いつもの感覚」に戻すことが大切です。
ルーティンを習慣にするコツ
せっかく作ったルーティンも、使わなければ効きません。無理なく続けるための工夫を紹介します。
まずは1つの場面に絞る
あれもこれもと欲張らず、「サーブの前だけ」「打席に入る前だけ」と一場面に絞って始めると定着しやすくなります。
練習ノートに書いておく
決めた手順を紙に書き出しておくと、迷わず実行でき、振り返りもしやすくなります。
しっくりこなければ調整する
ルーティンは一度決めたら終わりではありません。使いながら自分に合う形へ微調整していくのが、長く効くルーティンを育てるコツです。
最後に伝えたいこと
ルーティンは、緊張する本番で「いつもの自分」を呼び戻すお守りのようなものです。派手である必要はまったくありません。自分がスッと落ち着ける、短い手順を一つ。それを練習から大切に積み重ねていけば、ここぞの場面であなたを支えてくれます。
そして、うまくいった日のルーティンは「正解」としてメモに残しておきましょう。自分に効く手順が、少しずつはっきり見えてきます。
まとめ
- ルーティンは縁起担ぎではなく、注意を集めるメンタル技術
- 「落ち着く動作+キーワード+イメージ」を同じ順番で固定
- 10〜20秒程度に短く、練習から毎回くり返す
まずは「深呼吸+ひとことキーワード」だけのミニ・ルーティンから始めてみましょう。

